材料科学の進歩が電源の設計と性能を向上させる

Close-up of a Printed computer mother board
電源における高効率の追求が、幅広い分野での性能の向上を推進していることは周知の事実です。材料科学の進歩が、電源設計に影響を与え、より効率的でコンパクトかつ信頼性の高いソリューションの開発を可能にする上で、重要な役割を果たしています。電源設計に影響を与えている新しい材料をいくつかご紹介します。

ワイドバンドギャップ半導体(SiCおよびGaN)

もちろん、最初に言及すべき新素材は炭化ケイ素(SiC)窒化ガリウム(GaN)です。この2つのワイドバンドギャップ半導体は、複数の電力アプリケーションにおいて、急速にシリコンに取って代わっています。SiCおよびGaNパワーデバイスは、Siよりも高い温度と周波数で動作するため、既存の設計で、より効率的な電力変換が可能になり、シリコンデバイスでは実現できない新しいトポロジの使用も可能になります。これらの材料を使用した電源は、よりコンパクトで軽量になり、全体的なパフォーマンスが向上します。SiCデバイスは、データセンターの高効率ラックマウント設計で人気が高まっています。一方、GaNは、ラップトップや携帯電話の充電器でよく見られる低電力設計で人気があります。両方の材料の性能範囲が拡大するにつれて、中電力アプリケーションではSiCとGaNの間にかなりの重複が生じることが予想されます。

磁性材料

磁場は、スイッチング電源において、電圧レベルの変更、エネルギーの蓄積、およびガルバニック絶縁に使用されます。高い飽和磁束密度や低いコアロスなどの向上した磁気特性を持つ新しい軟磁性材料により、電源におけるトランスやインダクタの効率が向上します。これらの材料は、エネルギー損失の削減と電力密度の向上に貢献します。

ナノ結晶合金は磁気コアの構築に使用されています。これらの材料は優れた磁気特性を示し、コアロスが低減するため、電源の高周波アプリケーションに適しています。

誘電体材料

新しい誘電体材料は、エネルギー貯蔵の強化、損失の低減、効率の向上、さまざまな動作条件下での信頼性の高い動作の保証など、電源におけるコンデンサの性能を向上させています。これらの材料はより高い電圧と周波数に耐えることができ、電力密度と信頼性の向上に貢献します。

導電性ポリマーなどの高分子コンデンサ材料の進歩により、導電性が向上し、等価直列抵抗(ESR)が低下し、より寿命の長いコンデンサが実現しました。高分子コンデンサは、その優れた性能により、電源アプリケーションで使用されることが多くなっています。

絶縁材料

これらの材料は、トランス、コンデンサ、その他のコンポーネントの絶縁システムにおいて重要な役割を果たします。この部分での改善により損失が削減され、信頼性が向上し、熱性能が向上することでよりコンパクトで効率的な設計が可能になります。

窒化アルミニウム(AlN)や窒化シリコン(Si3N4)などの高性能セラミック絶縁体は、優れた熱伝導性と電気絶縁性を備えています。

先端導電性材料

高い導電性を持つ金属や合金、特に導電性が向上した銅やアルミニウム合金の使用は、導体やコネクタなどの電源コンポーネントにおける抵抗損失を減少させることに寄与します。

柔軟かつ伸縮性のある材料

柔軟な基板と伸縮性のある材料の開発により、形状に適応する柔軟な電源の設計が可能になります。これらの材料は、空間の制約や従来とは異なるフォームファクターが重要となるアプリケーションに適しています。

3Dプリント材料

3Dプリント技術により、電源製造において多様な材料を使用することが可能です。積層造形は、複雑でカスタマイズされたコンポーネントの作成を可能にし、設計の柔軟性の向上と迅速な試作につながります。

サーマルインターフェース材料

電源の電子部品の信頼性、効率、寿命を維持するためには、熱の効果的な除去が不可欠です。サーマルインターフェース材料は、パワートランジスタのような発熱デバイスとヒートシンクのような放熱デバイスの間に配置されます。これには熱接着剤、パッド、ペースト、ガスケットが含まれ、効果的な熱放散には欠かせません。高い熱伝導性と向上した熱抵抗特性を持つ熱ゲルなどの新しい素材は、パワーエレクトロニクス部品によって発生する熱の管理に役立ち、全体的な信頼性と性能を向上させます。

さらに将来的には、電源の熱管理アプリケーション向けにグラフェンとカーボンナノチューブの研究が進められています。これらの材料は優れた熱伝導性を備えているため、高電力密度環境での放熱ソリューションに適しています。

環境に優しい材料

持続可能性への取り組みの強化によって、電源設計における環境に優しい材料の使用が促進されています。これには、環境不可の低い材料、リサイクル可能なコンポーネント、RoHS(特定有害物質使用制限指令) 規格への準拠が含まれます。

先進ナノ材料

ナノコンポジットなどのナノ材料は、その独自の電気的、熱的、機械的特性について研究されています。電源のさまざまなコンポーネントにナノ材料を組み込むことで、パフォーマンスと効率を向上させることができます。

プリンタブルエレクトロニクス材料

フレキシブルエレクトロニクスおよびプリンテッドエレクトロニクスの分野では、新しい材料をベースにした印刷可能な導電性インクが開発されています。これらのインクにより、プリント回路やプリントコンポーネントの製造が可能になり、電源の設計と製造に新たな可能性が生まれます。

RECOMは材料科学の進歩を活用

RECOM製品は、これらの材料科学の進歩が当社の厳しい品質基準を満たし、量産段階が可能になると、これによるアップグレードを最大限に活用します。この分野での改良の多くは、効率の向上、温度範囲の拡大、信頼性の向上といった形で現れるものの、顧客には直接見て取れないかもしれません。

例えば、新型のRKKは、人気のある既存のRKE/RFMM シリーズのアップグレード版で、1Wの非安定化絶縁型SIP-7 DC/DCコンバータです。RKKは平面トランスを備え、改良された磁気特性を誇り、低EMI、ディレーティングなしでの105°Cまでの動作、長寿命、そして軽負荷まで維持される高効率を実現しています。ポッティングを排除することでコストと重量が削減され、重量は約半分の1.7gになり、「環境に優しい」製品としての評価が向上します。新たなシリーズであるRYKも、完全線形安定化出力を有し、同様の改良が施されています。

まとめ

材料科学の分野での継続的な研究と革新が、電源技術の進化を形作り続けています。幅広い分野での進歩があり、改良された半導体材料、誘電体、絶縁体、持続可能性など、電源の性能向上に寄与しています。

これらの先進材料を電源設計に組み込むことは、効率、信頼性、小型化、持続可能性の向上に貢献します。RECOMの設計者は、新しい材料を採用した新しいコンポーネントを常に評価し、必要に応じてそれを設計に追加しています。
  Series
1 DC/DC, 1.0 W, Single Output, THT RKK Series
Focus
  • Low cost
  • 1:1 Input voltage range
  • Efficiency up to 82%
  • 4kVDC/1 second isolation
2 DC/DC, 1.0 W, Single Output, THT RYK Series
Focus
  • Low cost
  • 1:1 Input voltage range
  • Efficiency up to 81%
  • 4kVDC/1 second isolation