現代電子機器の熱抵抗入門

Heat transfer methods: conduction, convection, radiation
機器の高性能化・小型化に伴い、ほぼ全ての業界のエンジニアにとって電子機器の熱管理最適化は継続的な課題となっています。ファン、水冷システム、ヒートパイプなど高温部品から放熱するための独創的なソリューションは数多くありますが、システムの熱性能をグラウンドレベルで最適化するために、部品自体にも多くの改良が加えられています。

この記事では、部品や熱管理システムを最適化する方法をよりよく理解していただくために、電子機器の熱性能の主な構成要素を概説します。また、システムの汎用性と性能を最適化するために、部品レベルで処理可能な重要なパラメータについても説明します。

動作周囲温度

IoTデバイス、医療機器、産業用センサーアセンブリなどの製品を設計する際、ほぼすべてのコンポーネントにはパラメータとして最大動作周囲温度が規定されています。この最大周囲温度は、コンポーネントの仕様を満たし、かつその物理的特性が損なわれないような値をコンポーネントメーカーが決定します。例えば、スイッチングトランジスタの中には、非常に高い電力負荷をスイッチングすることができるものがありますが、あまりにも高い周囲温度にさらされると内部の半導体接合部が溶けてしまうことがあります。また、温度は材料の導電特性に直接影響を与えるため、最大動作温度を超えると、その後部品の性能が劣化したり変化したりすることがあります。

熱源を遠ざける

Heat transfer modes diagram
Fig. 1: Heat extraction paths from a cylindrical PCB-mounted capacitor
ほとんどの電力変換デバイスやICのように、内部の電力消費量と周囲温度のしきい値が固定されている場合、ケースの表面温度は、内部の熱抵抗と周囲への熱伝達の有効性に依存します。内部熱抵抗は、熱源からデバイスの表面まで、どれだけ効率的に熱が伝わるかを表します。

しかし、多くの人が熱管理というと、部品の周囲への熱伝達の有効性、すなわち対流、伝導、放射経路等を思い浮かべます。これらの方法には、受動的な熱交換器、ファン、水冷システム、ヒートパイプ、ヒートシンクなどがあります。

そのため、規定値内のケース温度を維持する最良の方法は、デバイスの内部熱抵抗と周囲環境への熱伝導の両方に直接影響を与えることです。熱的に完璧なデバイスは、熱抵抗がゼロで、環境への熱放散が無限大です。しかし、部品は現実世界の材料でできているためそれぞれが固有の熱抵抗特性を持っています。また、完璧に熱を伝達できるシステムは存在しないので、システム設計者は設計の初期段階から重要な部品の熱性能を最適化する必要があります。

固定変数

多くの設計者が知っているように、アプリケーションの様々なパラメータは固定されていることが多く、これらの要件を満たすようにシステムを設計する必要があります。場合によっては、部品の効率、周囲の温度、システムの熱伝達メカニズムなどが、最終的なアプリケーションによって固定される変数となります。また、多くの場合、仕様に合った動作条件と低いケース温度を実現するためには、熱設計を改善した部品を選択して内部の熱抵抗を下げるしかありません。

内部熱抵抗の最適化

部品の全体的な熱抵抗と、熱源とケース温度の最終的な動作温度を表すことができる2つの重要なパラメータがあります - Ψjtとθjaです。Ψjtとθjaはいずれも、各部品に固有の抵抗パラメータであり、さまざまなパッケージで異なります。Ψjtは熱源とパッケージ表面間のマルチパス熱流を測定する熱特性パラメータであり、θjaは熱源と周囲温度間の直線的な熱抵抗を表します。Ψjtは電力に依存しており、大消費電力、高ケース温度でのΨjtの増加は、最終的にデバイスの性能を妨げることになります。また、Ψjtが最適化されていても、θjaの抵抗値が高いと、ケースの温度が上がりすぎたり、動作周囲温度が制限されたりします。



Ψjtやθjaを低減するためには、材料の最適化、製造技術、接合部から周囲へのさまざまな熱伝達方法など、多くの改善点があります。最近の熱抵抗低減技術としては、3D Power Packaging®があります。RECOMはFCOL、組み込みIC、サーマルビアなどの3D Power Packaging®(3DPP)テクノロジを用いて、Ψjtとθjaの値を大幅に改善することに成功しました。3DPP製品で最終的にこれらの値を下げることで、デバイスの周囲温度を制限することなく、電力性能の向上を実現することができます。3DPP製品のような高電力密度ソリューションは、アクティブな冷却方法や大型のパッシブヒートシンクを使用する必要がない高性能・高効率のデバイス向けに設計されています。

RECOMの最先端3DPPテクノロジならびに高効率電源設計における低熱抵抗の重要性についての詳細は3DPPアプリケーションページをご覧いただくか、RECOMの3DPP評価ボードをinfo@recom-power.comからご注文下さい。
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