絶縁型DC/DCコンバータ用超低ノイズフィルタ

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すべての絶縁型DC/DCコンバータは、電気的ノイズを発生するスイッチング素子を含んでいます。トランスのような高誘導性負荷をドライブするパワースイッチングトランジスタに関連する寄生のインダクタンスと静電容量は、スイッチング共振を避けられないことを意味しています。数百kHzの中程度のスイッチング周波数で動作するシンプルなDC/DCコンバータは、最大20MHzの範囲のノイズを持っています。

このような高周波数の干渉は、配線から配線に飛び、部品内部の結合容量介して入力から出力へ、コンバータの全体にわたり入り込んでしまいます。加えて、入力から出力への脈動エネルギーの流れは、出力リップルと反射入力リップル電流の原因になります。この脈動電流は、ワイヤ、PCB配線、ビア、端子などの誘導性成分によって発生する低周波数電圧をもたらします。入力および出力の電圧リップは、入出力へ容量を追加することで低減できますが、コモンモードノイズをフィルタするのは困難です。なぜなら、コモンモードノイズは入力または出力の両端に現れるので、そのフィルタでは取り除けません(図1)。


図1:DC/DCコンバータのコモンモードノイズ(出典:DC/DC Book of Knowledge1

非常にリップルとノイズが低い電源を作るには、干渉スペクトラムの異なる部位に対応する3つの別々のフィルタが必要です。

1:出力リップルフィルタ。このフィルタは、トランスを越える通常の電力転送による出力の脈動を削減します。各スイッチングサイクルは、出力コンデンサによって吸収されなければならないパルス電流を発生させます。電力転送サイクルの間に、出力コンデンサは負荷電流も供給する必要があります。出力コンデンサの電圧は、ノコギリ波でスイッチングサイクルごとに上昇および下降します(図2)。


図2:一般的なDC/DCコンバータの出力リップルとノイズ波形

このノコギリ波上部の重畳は、毎回パワートランジスタがオン(Vceが急激に降下)またはオフ(Vceが急激に上昇)に切り替わる際の共振効果による高周波数ノイズです。高周波数ノイズはスイッチングサイクルの頂点と谷間に同期します。

2:入力リップルフィルタ。パワートランジスタがオンに切り替わる度に、入力電流は急激に上昇します。また、オフに切り替わる度に急激に降下します。入力コンデンサがフィルタできないこのリップル電流に重畳したコモンモードノイズがありますが、一般に入力側のそのノイズレベルは出力のものより小さいです。これは、主電源が多くの高周波数ノイズを吸収する低インピーダンスソースだからです。一般的な入力反射ACリップル電流を図3に示します。


図3:反射リップル電流

3:トランスは、入力と出力間で高インピーダンスソースのように振るまいます。したがって、スイッチングノイズは容易に配線間の結合容量を介してトランスを越えます。このノイズは、絶縁間隙間にコンデンサを追加することよって、出力から入力に戻る低インピーダンス経路を提供することで低減できます。

ここで、出力リップルとノイズが5mVp-pより小さい絶縁電源を作るという課題を設定しましょう。このような円滑な電源は、非常に小さい信号を測定する非常に敏感な増幅回路や、24ビットA/Dコンバータのような高分解能信号処理アプリケーションで必要になります。

オンボードリニアレギュレータを使った安定化出力を持つR1ZX-0505 DC/DCコンバータを使います。このコンバータはすでに標準で30mVp-pの低ノイズです。

最初のステップは、2nFのコンデンサをーVoutと+Vin間に追加することでした。トランスの100pFの結合容量と比較すると、2nFのコンデンサは十分にインピーダンスが低いリターン経路を提供します。この1つの部品は出力ノイズを大きく低減しますが、入力または出力のリップルに関してはほとんど効果を示しません。

第二のステップは、入力と出力端子間にコンデンサを追加することでした。実効的なESRを低減するため、入力と出力の両方に2つの10µFのMLCCを並列に接続しました。結果として入力と出力のリップルを大きく削減することができましたが、まだ出力には頑強にコモンモードノイズが見られました。図4は出力波形を示しています。

現状、しなければならないことは、これらの高周波スイッチングスパイクをフィルタで取り除くことに違いありませんでした。しかしながら、それらはコモンモード干渉であるので、静電容量やLCフィルタの追加はほぼ効果がないため簡単ではありませんでした。


図4:入力および出力リップル抑制コンデンサをともなう出力波形

最適なソリューションが見つけられなかったので、コモンモードインダクタのサンプルから異なる組み合わせのコモンモードインダクタを試してみました。入力に関しては、他に対のコンデンサを使うパイ型フィルタの中に50µHのチョークコイルが必要でした。リニアレギュレータのCMRRが高いので、入力リップルはまだタイトな制御下に維持される必要がありました。同様のコモンモードパイ型を出力に入れましたが、より小さい10µHのチョークコイルで十分でした(図5、6)。




図5:フルにフィルタを入れた設計

フィルタがない場合の出力(C3のみ)



フィルタを入れた場合の出力(コモンモードチョークあり)


図6:出力波形のビフォア・アフター(スケールは同じ)

まとめ: 全負荷での出力リップルとノイズは、コモンモードフィルタによって約2mVp-pになりました。どの部品定数の変更もこの特性をこれ以上良くすることはできず、したがって、これは最低限の値です。フルにフィルタを入れるのは複雑に見えるかもしれませんが、余計な基板スペースがほとんどなく、必要な部品が小型でなければならない条件で、優れた低ノイズ(-68dB)電源を手にするためには、すべての異なる干渉源を抑制する必要があります。

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1, please refer to the DC/DC Book of Knowledge
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