単相および相間アプリケーション用補助電源

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市場には多くの高入力電圧AC/DC電源があります。90~305VACの入力範囲は、100、115、277VACの公称電源電圧をカバーし、全世界の電源に対応します。しかしながら、多くの産業用3相設備は中点ワイヤが利用できず、相間入力をカバーする、より広い入力電圧範囲が必要です。この記事は、6:1入力電圧範囲の低消費電力AC/DCコンバータが新規に開発された理由を説明します。

最初に手短に技術的背景を説明します。3相主電源の3つの位相はそれぞれ120°です。相間電圧は、図1のベクトル図が示す通りです。VABは、単相電圧VAより√3高い電圧です。


図1:3相電源のベクトル図


VA = 単相電圧 (rms) VAB = 相間電圧 (rms)
115 VAC 200VAC
230 VAC 400VAC
277 VAC 480VAC

産業用アプリケーションの中には、AC主電源入力から整流によって平滑ではないDC電源を生成します。どのような標準AC/DCコンバータでも、その入力電圧範囲以内であればDC電源から動作します。AC電圧の実効値(rms)は、純粋な抵抗性負荷のAC電源と同じ加熱効果をもたらす、等価のDC電圧と定義されます。ピークAC電圧は、実際には実効値電圧よりかなり高い値です(図2)。AC主電源が全波整流された場合のDC電圧は、公称実効値電圧の√2倍高くなります。したがって、あり得るすべての整流された3相AC入力電圧をカバーするには、コンバータのDC入力電圧範囲は少なくても678VDCである必要があります。


図2:全波整流されたAC波形


称単相電圧 (rms) ピーク整流電圧 (DC) 公称3相電圧 (rms) ピーク整流電圧 (DC)
115 VAC 163 V 200 VAC 283 V
120 VAC 170 V 208 VAC 285 V
220 VAC 311 V 380 VAC 538 V
230 VAC 325 V 400 VAC 566 V
240 VAC 340 V 416 VAC 588 V
277 VAC 391 V 480 VAC 678 V

ACおよび整流されたACの両方の、単相および相間アプリケーションの要求に適合するためにRECOMは、85~528VACの超ワイド入力AC電圧範囲および120~745VDCのDC入力電圧範囲を備え、100VACから最大480 VACのどのようなACまたは整流されたAC主電源でも使用可能なRAC05-K/480シリーズを発表しました。

このような超ワイド入力電圧のAC/DCコンバータには、主に3つのアプリケーションがあります。

状態監視保全

状態監視保全(CBM)は、「壊れていなければ修理しない!」と言うスマートな方法です。このコンセプトは、機械やシステムを連続的にモニタし、すべてのモニタ値が許容内であれば、一切予防のための保全は行わないものです。唯一、表示器が新たな傾向、例えば予想外の温度上昇、モータの振動特徴の変化、データの異常なパターンなどを示し始めた場合は調査を行い、必要に応じて点検や修理が実施されます。

CBMは、高度な保全システム(故障して修理より予知と予防)に利用され、特にダウンタイムが重要な問題になるクリティカルなシステムや、CBMによって予備部品の在庫と保全部署の運営費(少ないエンジニアでより多くの装置の稼働を維持できる)を大幅に削減できる大工場で有用です。

全情報監視システムのように、CBMのコンセプトはモニタしている装置からの定期的な情報通信を必要とします。ヘルスモニタリングシステムのモニタを例に取ると、モニタ結果の正確なイメージを作り上げるため、センサが温度、振動、可聴ノイズ、回転速度、電源電流を測定します。この情報は連続的に有線フィールドバスを介して送信されるか、データトラフィックを削減するために事前処理され不定期にワイヤレスIoTリンクで送信されます。どちらの場合も、CBMモニタリングシステムに対する安定で信頼性のある低電圧DC電源が必要になります。図3は、中点ワイヤが提供されない3相電源の2つの相から給電されるシステムの例です。


図3:3相モータ電源の2相から給電されるモータヘルスモニタリングシステム


同じようなローカル相間AC/DC電源が、3相電源メータ、電気自動車充電ステーション、継続可能エネルギーモニタリングおよび制御システムでも必要になります。

スマート街灯

低消費電力380~480V AC/DCコンバータの最も一般的な2つ目のアプリケーションは、スマート街灯です。街灯は、各街灯柱もしくは街灯セクションを、3相のうち2相間で接続するのが一般的です。これにより、負荷は3相すべてにおいて均一に整合され、同時に必要なケーブル量を削減します。各街灯柱は別々にアース杭で接地され、アースが別個なので中点ワイヤは不要です。


図4:一般的な街路灯の配線図。各ランプは2つの相間に接続される。


ランプの制御は、無線や電力線通信、または自律制御(各街灯柱にGSP受信機が組み込まれ、GPSの膨大な情報の一部として送信される位置、時間、日没および日の出(常用薄明)時間の情報を得る)によって一元的に調整されます。複数階の大型駐車ビルディング、動的街路照明、広域照明のような照明の仕組みの場合、動きや車両の感知器が、照明が必要なエリアだけの街灯柱グループを点灯させるために搭載されます。

その制御がローカルにせよ中央にせよ、センサや通信用送受信機の電源は相間電圧から供給する必要があります。電力要求は大きくなく、赤外線感知器、GPSモジュール、メッシュ無線などへの給電は、通常3~4Wで十分です。高電圧主電源から敏感なセンサや無線装置に給電する場合の重要な課題は、サージや過渡への対処です。屋外のスマート照明装置は通常、OVC(Over-Voltage Category:過電圧カテゴリ)ⅢまたはⅣに分類されています。これは、OVCのカテゴリが高いとソースインピーダンスがより低くなるので、電圧サージのエネルギーが強大になることを意味しています。

動作電圧 (AC rms) OVC I (30 Ω) OVC II (12Ω) OVC III (2Ω) OVC IV (2Ω)
150 800 1500 2500 4000
300 1500 2500 4000 6000
600 2500 4000 6000 8000

図5:過電圧カテゴリ(OVC)


RAC05-K/480は、OVC Ⅲ準拠部品(ガス放電チューブ、ヒューズ、MOV)を内蔵しています。OVC Ⅳ機器は、規格要求に基づく、複数回のサージ電圧/サージ電流を受けた後に交換可能な犠牲避雷器の外部構成によるプリフィルタを必要とします。

高信頼性装置

主電源障害の90%近くは、単相の短絡が原因と推定されています。3相の障害は極めて稀です。電力供給が連続的な産業用アプリケーションでは電力継続措置や障害防止が必須で、接地しない装置が使用される場合があります。

これは、図1に示したY字構成より、デルタ配電システム対してとりわけ有効です。デルタ構成は、接地なし、コーナー接地、またはセンタータップ接地で、高インピーダンスグラウンド接続かソリッドグラウンドのどちらかです。このような構成の背後にある理由は、グラウンド障害がシステムのいくつかの部品に流れる不要な電流の原因になりますが、システムの残りの部分はまだ正常動作していることにあります。Y字接続は最も一般的ですが、デルタ接続はデータセンター、自動車工場や製紙工場のような連続稼働工場の重要な装置に関しては未だに多く使われています。

RAC05-xxk/480は、4kVAC二重絶縁のクラスⅡデバイスでグラウンド接続は不要なことから、デルタとY字電源のどちらとも互換性があります。また、図2に示した相冗長電源を作る3相整流とともに使用されます。1つの相に障害が発生しても、他の2つの相によって給電は継続されます。


図6:RAC05-xxK/480の可能な接続


まとめ

RAC05-K/480シリーズは多用途のAC/DC電源で、85VAC~528VACの単相または相間アプリケーションに使用可能です。OVC Ⅲサージ耐性を備えているので、外付け部品なしに多くの産業用アプリケーションに搭載できます。スマート産業機器、スマート照明、高信頼性産業分野での多くのアプリケーションに対応します。

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